手の届くところにあるロボット

カーシート向けの新しい品質保証ソリューションで活躍するUR10E協働ロボット

作成者: Helmut Schmid WE|2020/03/19 0:52:51

 品質保証は、工業製造分野における最優先事項です。一貫した高い品質レベルの実現を目指し、GÖPEL electronic社では自動車業界の顧客向けの自動化ソリューションの開発を行いました。このソリューションでは、組み入れられたURロボットがこれまでは手作業で行っていた退屈で人間工学的に負担の多いテスト作業を引き継ぎます。

 質の高さは、多くのプレイヤーを抱えるグローバル市場において、競合他社に対する決定的なアドバンテージとなります。同時に、多くの企業にとっては熟練した従業員の不足が大きな障害となっています。生き残っていくために、多くの組織がますます強くなるプレッシャーの中での製造を余儀なくされています。こうした環境の中で、成功が期待できるのは最高の品質を最低の価格で提供できる企業です。

 この現実を踏まえると、品質保証は大きな課題の1つになりつつあります。このルーティン作業には、手作業で行われた場合にはエラーの原因となりかねない工程が多く含まれています。

 

 

自動車産業:製品欠陥が壊滅的な影響をもたらす可能性のある産業

 ますます短いサイクルでイノベーションが市場にもたらされるようになっている自動車産業は、特に大きな影響を受けています。これまではよりコンパクトで標準装備の車を販売することで知られていた企業が、最新式のエアコンやマッサージシートなどの非常に高度な快適機能を搭載した車を販売しています。このような機能は、ほんの数年前には高級車だけの特権でした。

 すべての対策を講じても機能または安全性に関わる製品欠陥が発生した場合、それはすぐに壊滅的な結果をもたらす可能性があります。もし、発覚が納品後であった場合には、多額の費用が掛かるリコールを実施することになり、ブランドの信頼を失うことも多くあります。ブレーキやエアバッグの不具合などであれば、最悪の場合はユーザーを危険に晒してしまうこともあります。

 UR10ロボットが様々なテストルーティンを実行し、ぞれぞれのカーシートが正しく製造されていることを確認している様子をご覧ください。

 

ソリューション:自動化による一貫した高品質の実現

 GÖPEL electronic社はドイツ、イェーナに本社を置く企業で、遡ること1991年にテストおよび検査システムを開発し、さまざまな企業の品質保証をサポートしてきました。多くの自動車メーカーと車のシートの開発・製造を主に行うサプライヤーなどを顧客に持つGÖPEL electronic社の自動車テストソリューションチームのマネージャ、Thomas Schöppe氏は、同社がテストシステムに自動化コンポーネントを追加した理由を次のように述べています。

 「日々、お客様の課題に直面する中で、最終工程のテストの自動化は歓迎されるソリューションになりうると気づきました。私たちは、お客様が一貫して高品質の製品を市場に提供できるようサポートするアプリケーションを開発したかったのです。」

 

アプリケーション:生産過程への柔軟な統合

GÖPEL electronic社は顧客の特定要件を満たすシステムの開発を行い、アプリケーションのコアにユニバーサルロボットの協働ロボットを採用しました。

 

 GÖPEL社はロボティクスにおける選択肢に関する調査を数年かけて行い、最終的にユニバーサルロボットの新しいe-Seriesラインナップで最もリーチが長い協働ロボットアームUR10eの採用を決めました。同社の自動車テストソリューション分野を担当するアプリケーションエンジニアのPhilipp Kießlich-Köcher氏は、GÖPEL社がユニバーサルロボットを選択したいくつかの理由を次のように語りました。

 「ロボットの動きを監視する力センサシステムなど、e-Seriesのさまざまな機能には説得力がありました。ユニバーサルロボットは私たちと連携してのシステム開発にも非常にオープンであることもわかりました。」

 協働ロボットが取って代わったのは、同社のEOLシーティングテストシステムOsCARです。生産ラインの最後に配置されたこのシステムは、あらゆるメーカーのカーシートのテストを行い、正確に機能することを確認します。

 これまでは、GÖPEL electronic社でのユニバーサルユニットのテストは手作業で行われていました。このシステムは、車とドライバーの相互作用をシミューレションするため、カーシートに影響を与えるさまざまな種類の刺激を生成します。電圧、電流、そしてユニットに統合されているBUSシステムに関連するその他の値を測定するため、従業員がすべてのシートのボタンとスイッチを作動させていました。

 横方向の動きが頻繁にあるこの熟練の従業員の仕事を、ロボットが引き継ぐことは簡単ではありませんでした。

 URロボットの導入により、状況は一変しました。6軸多関節ロボットアームはすべてのスイッチとボタンに到達でき、すべての動きを同じ力で行うことができます。手作業での入力とは対照的に、協働ロボットは疲れを知らず、中断なしで全シフトを通して稼働できます。その結果、従業員は非常に骨の折れる手動での入力作業から解放され、現在はUR10eが以下の作業を一貫した精度で行っています。

・カーシートのボタンおよびスイッチを一貫した力を加えて作動させる

・全エンドポイントでの電動および手動でのシートの調整

・着座検出用ツールのポジショニング

・シートベルトタングの挿入と解放

 協働ロボットには、関連するプロセスに沿ったテスト対象コンポーネントの安全かつ確実なテストを可能にするさまざまな種類のツールが付属しています。GÖPEL electronic社はシステムを開発しただけではなく、顧客の会社での統合も行います。既存のシステムへの統合だけではなく、完全なソリューションとしての統合も可能です。

 「品質保証が自動化されたおかげで、ユーザーは製造エリアを出ていく製品が最高の状態であると確信することができます。」と、Schöppe氏は述べています。「その上、これまでこれらの作業を担当してきた従業員を他の仕事に割り当てることができます。そしてそれは、当社のお客さまの明らかな競争上の優位性となるのです。」

 

Robotiq社のUR+認定グリッパを搭載したUR10eがカーシートのボタンやスイッチを作動させています。