製造業においてロボットの購入を検討している企業は、ともすると、導入しようとしているロボットの種類について判断が難しいことがあります。たとえば、大手自動車メーカーで使用される大型の産業用ロボットは、他の企業の工場で使用されている協働ロボットによる機械加工とは大きく異なることがありますが、外見の違い以外にどのような違いがあるのか、企業の経営陣や購入担当者には分からないことがあります。両者には能力、安全性、およびプログラミングの面で大きな違いがあり、その違いこそ、自動化の施設更新を目指す人々が十分に理解しておくべき重要な点と言えます。
協働ロボットと産業用ロボットの決定的な違い
協働ロボットと産業用ロボットの違いを理解するための最も簡単な視点は、協働ロボットが人間の作業員と一緒に働くように設計されているのに対して、産業用ロボットは人間の作業員の代わりに働くように設計されている、ということです。協働ロボットは、人間の作業員だけで行うにはあまりにも危険であったり、大変な労力を要したり、うんざりするほど退屈だったりする作業を手助けし、それにより、製品の製造工程から工場作業員の仕事をなくさずに、安全かつ効率の高い作業環境を作り出すことができます。それとは対照的に、産業用ロボットは、製造工場で人間の作業員の手を借りずに製造工程のほぼ全体を自動化するために使用されます。それによって従業員は、退屈で、反復作業による傷害を起こしがちな作業から解放され、もっとやりがいのある作業に従事することができます。
協働ロボットは産業用ロボットと比べてプログラミングが簡単です。なぜなら、協働ロボットは仕事を「学ぶ」ことができるからです。工場作業員はアームを動かしたい軌跡に沿って動かすだけで協働ロボットをダイレクトティーチングによる再プログラミングができます。それによって、協働ロボットは新しい動きを「覚えて」、その動きを自分だけで繰り返すことができるようになります。産業用ロボットの再プログラミングは簡単にはできませんし、実施する工程を変更する場合はエンジニアが新しいプログラミングを作成する必要があります。
ニューヨーク州ブルックリンのVoodoo Manufacturing社で協働ロボットのUR10を稼動させるまでの所要時間は、ほんの数時間でした。
しかし、協働ロボットはサイズが小型であり、人間に近接して作業する必要があるため、重量物を扱う製造工程用には設計されていません。産業用ロボットは、自動車の製造で使用されているロボットのように、重量やサイズの大きい材料を扱うことができますが、作業場所に人間が立ち入らないように安全柵を設置する必要があります。それに対して、協働ロボットは人間の近くで稼働させても十分に安全なので、事前にリスクアセスメントを行えば産業用ロボットのような安全対策用設備は必要ありません。
製造業でよくある誤解
ロボットは、従業員の安全リスクを軽減し、効率を高め、諸経費を節減するという点で多くのメリットがありますが、残念なことに、ロボットソリューションを導入する最適な方法について、誤解されていることがしばしばあります。たとえば、熟練度の低い労働者をすべて協働ロボットと入れ替えることや、産業用ロボットに適している重量物を扱う製造作業を協働ロボットにやらせることを期待して、購入が検討されている場合がそれに当たります。先ほど説明したように、協働ロボットは人間の労働者と協力しながら作業をするように特別な設計がされていて、現場への影響を最小限に留めながら、安全面の問題や効率の阻害要因を解決する手段として使用した場合に、最も威力を発揮します。産業用ロボットには、製造業の中で確固とした役割があります。協働ロボットを工場の完全自動化のための低コストで手っ取り早い方法とみなすことはできません。協働ロボットは、個々の協働スペースに適した形で挿入、利用されたときに、製造業に革命を起こせる潜在能力を十二分に発揮することができると考えます。
カナダのトロントにあるParadigm Electronics社では、URロボットが従業員と協力しながら拡声器のキャビネットを研磨しています。
コストおよび必要なエンジニアリングは完全に顧客のニーズ次第であり、幅広いソリューションに触れて検討することが、ロボットによる自動化への最適なアプローチとなります。
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